岡山大学西洋史学研究室便り

岡山大学西洋史学研究室で行われたことなどを更新していきます。

イギリス史勉強会・第三回、第四回のご報告

こんばんは、西洋史M1の北川です。
今回はこれまでに行われたイギリス史勉強会第三回・第四回の内容をレポートしたいと思います。

まず第三回目では『イギリス帝国の歴史』第一章を扱いました。対象はおもに17、18世紀のイギリス帝国に関する内容です。
この時は時間がなかったため、充分な議論をすることはできませんでしたが、それでも「(イギリスの重商主義体制について、イギリスの)他の地域で生産されていた物品が植民地に入ってきたケースはなかったのか?」「イギリス東インド会社とは、どういう存在として捉えるべきか」などという問題提起がなされました。確かに東インド会社という名前については高校世界史などで習いますが、その性質については国家機関なのか民間企業なのか、「?」と思った方も多いと思います。また、企業という割には土地の統治をやるようになったりと、複雑な組織ですよね。

つぎの第四回目では第二章、おもに19、20世紀のイギリス帝国について学習しました。
この回では、この時期のイギリス帝国の方向性を表す「自由貿易帝国主義」という概念をめぐって、議論が白熱しました。「可能であれば、非公式支配による貿易を。必要ならば、軍事力による公式の領土併合によって。自由貿易を世界各地に強制する」という政策が可能であった要因はなんなのか? そして、スペインやポルトガル、オランダといった他の「海洋国家」との違いは何か? 帝国におけるインド地域の重要性の向上、その安定化のために軍事組織としての東インド会社が大きく貢献したにもかかわらず、なぜすぐに解散に追い込まれることになってしまったのか? などなど、興味深い問いがいくつも出されました。
また、前回あまり議論を深めることができなかった諸問題についても、改めて考察が行われました。例えば「他の地域で生産されていた物品が植民地に入ってきたケースはなかったのか」という問いに対しては「重商主義政策に伴う関税の存在」や「移民してもイギリスの生活様式が染み付いていたアメリカの人々は、ずっとイギリスの物品を消費し続けていたから」などという答えが返されましたが、これに対して西洋の物品や文化をありがたがった明治以降の日本と比較して「アメリカに移住したイギリス人たちは、どれくらい生活様式を維持できたのか」という新たな問いが出され、ああでもないこうでもないと議論が白熱しました。盛り上がりすぎた結果、時間内に話が収まりきらなかったほどです。

さて、『イギリス帝国の歴史』もあと一回で読み終わりますが、次回はどのような問題提起がなされることでしょうか? 楽しみです。

(文責・北川)