岡山大学西洋史学研究室便り

岡山大学西洋史学研究室で行われたことなどを更新していきます。

【第6回】中世史勉強会

こんにちは。
前回の更新からかなり時間が経ってしまいました……前は研究室旅行?! コスモス?!!
巷では既にクリスマスソングがかかっているのに(^ω^;)

 

さて、後期の授業が始まって以来、研究室では様々なイベントが行われておりました。
勿論、定期の勉強会も続いておりますよ!
と、いうことで。今回の更新は勉強会についてです~

本日研究室で開かれたのは「中世史勉強会」。

決められたテキストを全員で読み、担当者がレジュメ作成→口頭発表 という形式をとっております。
近代史については前の記事に投稿しておりますのでそちらも併せてどうぞ(・ω・)ノ

 

今回のトピックは「海の彼方のイタリア――イタリア都市の海外領土」。
イタリアの港湾都市が抱えていた海外植民地についてのお話です。
ジェノヴァヴェネツィアを主な例として提示し、「点」の支配と「面」の支配、現地(主にギリシア)支配の在り方、商業を通した土地経営への発展など様々なトピックについて言及されました。
地図を見ながらのプレゼンテーションによって位置関係も把握できたのですが、とりわけジェノヴァの支配領域はまさに点と点を結ぶような形で構成されています。
コルシカ島は近場ですしまだわかりますが、クリミア半島まで手を延ばしているってなかなか遠いところまで行くなあと……この辺りは前回の勉強会でも取り扱いましたが、時代によってはモンゴル系の影響も受けるんですね。交易拠点として押さえておく必要があったのだと言うことがわかります。
逆にヴェネツィアクレタ島キプロス島など島まるごとを支配領域にしてしまうケースが多く、これを文中では「面」的支配と表記していました。
拠点のみならず後背地も支配し、それが結果的に現地のギリシャ人との衝突を克服したことで、支配は600年にもわたって続くことになります。
興味深かったのが、ヴェネツィア系住民の土地貴族化です。商業で入植したはずが、14世紀には農地経営の方がスタンダードになっていたそうな。本国にも100年ほど先駆けて貴族化していたんですね。しかもその農産物は遠くロンドンなどとの貿易に用いられたそうです。ダイナミックに流動する中世社会の端緒を垣間見れたようで、やはり貿易は心躍ります!
議論の中心となったのはやはりその海洋交易の在り方。「海洋帝国」としてのオランダ・イギリスとの比較などにも及び、海軍史を専攻している先輩からはイギリス帝国の植民地経営との類似点が挙げられました。その文脈でオスマントルコとの関わり合いも推測されましたが、詳しくなかったためそれ以上の議論に持って行けず。。。ここは個人的な反省になりますが、もう少し勉強しておかなければなりません。
あとは植民地における宗教に関しては比較的寛容だったというのが少し意外でした。キリスト教の東西対立は激しいものと勝手に思いこんでいたフシがあったので、勉強になりました。
色々学べる奥深い回だったと思います。イタリアと言う地域は専門から少し離れることもあって毎回そうなのですが!
今回も参加して下さった皆さん、ありがとうございます。

次回は第6章「大学の誕生と都市」です。次回からは都市民の生活に踏み込んでいくので、よりイメージが湧きやすいかも?
多くの方のご参加をお待ちしております!開催日程は未定ですが、おそらくは年明けになります。

それではまた次回の勉強会もレポートします~

 

扱った文献
 齊藤寛海・山辺規子・藤内哲也編『イタリア都市社会史入門 12世紀から16世紀まで』2008年、昭和堂

 

(文責・片岡)